失業を契機にエネルギーを取り戻すため、思い切ってたった1人で海外旅行へ行くことに。
旅行会社に勤める知人と相談した結果、ラウンドチケットとユーレルパスだけを購入して出発。
巡った先は、オランダ(アムステルダム)・イタリア(ミラノ、ヴェネチア、フィレンツェ、ピサ)・フランス(パリ)
・ベルギー(ブリュッセル)・アメリカ(ニューヨーク)の5ヶ国。
片言の英語しか話せなかったので、困ったことにもいっぱい出くわす。今のようにインターネットが充実していれば、問題なかったかも。
オランダ訪問記
アムステルダム
成田空港から延々16時間のフライトで、アムステルダムのスキポール空港に到着。5月の初旬につき、春夏の服装に身をまとう。
到着すると何と気温6℃、いきなり凍える思いを経験。ヨーロッパは北極に近いせいもあり、夏でも北風が吹くと急に寒くなる日があるという。
スキポール空港のインフォメーションセンターで、日本語でホテルの紹介や見どころなどを案内してもらう。
初日の夜、時差ボケで疲れて就寝するも、夜の9:00になっても明るく、11:00になっても外が薄暗い状態で、なかなか寝付けない。
おもちゃでよく見る形と色の家が立ち並び、花もきれいで色鮮やかな街。ゴッホ美術館は、たまたま特別なイベント中。
入場券を近くの銀行で購入する指示を受け、朝の10時に銀行へ。購入できたチケットはその日の夕方5:00の入場券。
ゴッホ美術館では、教科書に載っていたゴッホの絵画が数多くあり楽しめる。
気づいたことは、ひまわりの絵・ベッドと椅子を描いた絵・その他数点が、同じ構図で色やタッチの違うものが、それぞれ3点づつ描かれていたこと。
教科書に載っていた絵は、このうちどれなんだろうと思わずつぶやく。
また、ゴッホの本物の絵を見た方はご存知のように、晩年の絵は荒削りで、画面上の絵の具が激しく盛り上がっている。
それを少し離れて見ると、躍動感に溢れていて今にも動き出しそうな感じ。やっぱりゴッホは天才。
美術館の近くの屋台で、フランクフルトを買った時のこと、屋台のおばさんが、キャッチアップと盛んに私に叫んでいた。
5回くらい聞いて初めて、手に持っているのがケチャップだと分かった瞬間、プリーズとフランクフルトを差し出した。
よく知っている言葉でも、発音が違えばこんなにも分からないものだと実感する。
最後の日、タクシーでホテルから空港に到着し、降りたらやはりまだ寒くて、ジャケットをホテルに忘れてきたことを思い出す。
あきらめるつもりで、インフォメーションセンターへ行き相談。
タクシー代だけで持って来るとの交渉が成立し、持ってきてもらうことに成功。ひと安心。とにかくオランダの女性は背が高い。
イタリア訪問記
ミラノ
アムステルダムから空輸でミラノへ。空港からバスでミラノセントラル駅に着き、インフォメーションセンターでホテル探し。
ミラノはホテル代金が高い。バス・トイレが共同の素泊まりで5000円。部屋にシャワールームがあるだけで8000円。
とりあえず5000円で交渉すると、1時間以内にチェックインを要求される。ホテルに到着すると入り口が閉まっていて、インターホンで連絡。
中から(キエ?)イタリア語で誰ですかの返事。自分の名前を言うと、ロック解除して入れる仕組みに少々驚き。
ミラノは何といってもファッションの聖地。
モンテナポレオーネ通りを歩くと、重厚な石作りの建物に、高級有名ブランドがずらりと軒を並べひしめきあっている。さすがミラノのという印象。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を見に、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会へ。
街はずれのヘンピな場所にポツンと建っている感じの教会。これが有名な「最後の晩餐」かと、それだけの印象。
自分が想像していた雰囲気の場所ではなかったので、あまり感動は湧いてこなかったというのが本音。
ミラノ大聖堂やガレリアを見ると、重厚で壮大でなおかつ迫力があって、これこそイタリア! たいへんな満足感。
大聖堂の中は、神秘で厳かな感覚を味わえる。
通りがかりの日本人に話しかけ、見どころやおすすめレストランを何軒か聞いてみる。その日の夕方、レストランへ食事。
店内に入ると、いきなり怒鳴られたかと思うと、「ヴァナセーラ」。実はこんばんわの挨拶だったことに気づく。
メニューには写真がなくイタリア語だけのもの。
何を注文してよいか分からず、ひたすらガイドブックに記載されているイタリア語を寄せ集めて、「予算3000円でおすすめの料理をお願いします」の文章を作成。
その間、20分程度。メモを渡した瞬間、店員さんが笑顔に!
料理が運ばれてくると、「ましあがれ」のような言葉を掛けてくる。
よくよく考えると、日本語で「召し上がれ」だと気づき、さすがイタリア人の茶目っ気を感じる。ここでのピザは絶妙でおいしく感じる。
日本で食べる生地と比べると、生地自体に塩分があり、具材が乗っていない部分もなかなかの風味。
朝食はパン屋さんへ。透明のゼリーが乗っているショートケーキのようなものがあり、何人かの客が購入しているのを見て購入。
食べてみると、甘さがなく塩味の効いたバター風味のケーキ。カプチーノと共に食べると最高の気分。
街にはあちこちにバールと言う立ち飲み屋のような店があり、ことある度にカプチーノを注文。イタリアに来てカプチーノはまったくのお気に入りに変貌。
イタリアは物騒な国だと聞いていて、朝から小学校低学年くらいのアラブの子どもたちが新聞を売り歩いているのを目にする。
へたに購入すると、大人が出てくる恐ろしいパターンになるのだそう。
また、階段を降りる時に限って、イタリアの青年がふらふらと寄り添ってくる。「コラッ」と一喝すれば、不思議と離れていった。
スカラ座ではオペラ鑑賞。劇場内は日本では見れない窓越しの鑑賞席があり圧巻の景色。
人間離れした歌声で素晴らしいと感じそれなりに感動したが、すべてイタリア語であるため余韻を楽しむことはなかった。
イタリア人は男性も女性も小柄な人が多く、日本人よりも小さい。女性に片言の英語で質問すると、恥ずかしそうにする素振りは、何故か頭にこびりついている。
ヴェネチア
サンタ・ルチア駅からヴェネチアの街へ。水の都と呼ばれるくらい、水に浮かぶ都市のイメージがぴったり。
ちょうどラセン階段で下へ下へと降りていく感じ。
階段を降りていく途中にガラスショップ・仮面ショップ・ステイショナリー店などがあり、ディスプレーに手が凝っていて、非常にきれい。
店内に入っても少しワクワク感。見慣れない商品がいくつもあって、色も独特できれいし、どの店に入っても飽きない。
途中いくつもの橋があり、そこから見える水上バスやゴンドラも美しい。
リアルト橋で露天商の主人から手招きされ、片言の英語でトイレに行くからここにいてくれと。仕方なしに露天商手伝い。
何も分からないまま、商品とお金だけのやりとり。釣り銭も出さずに交換しただけの状態。20~30分程度の後やっと露天商の主人のお帰り。
やれやれ。手土産をもらってさよなら。ちょっとした不思議な体験。
サンマルコ広場まで行くと、西洋画でよく見る風景にまた感動。本当にヴェネツィアとゴンドラはよく似合う。
フィレンツェ
花の都フィレンツェは、ルネサンスの雰囲気を残す街として歴史を感じる街。
どの建物も赤いレンガ風の屋根で、写真でよく見るイタリアの情緒を感じる。
街を歩くと有名ブランドのグッチやフェラガモの本店がある。
ディスプレイなどをしっかり見ながら、この街から世界へ発信しているのかと考えるだけで、何となくすごい店に見えた記憶が蘇る。
しばらく街を歩くと広場にミケランジェロのダビデ像が見える。
これが本物かと思いきや、ガイドブックを見ると、元々はここにあったものが、ミケランジェロ生誕400年の時に美術館に移され、この作品はレプリカであるとのこと。
それでもすごい迫力は感じる。
近くにはヴェッキオ橋があり、露天の店が連なっている。アクセサリー関係や革製品の店が多く、革製品に興味があったのでしっかり見物。
日本で買えば3万円くらいしそうなバッグが、5千円程度の値札がついていたので、思わず購入。とりあえず革製品に関しては安い。
その後何となく日本語を聞いてみたくなり、映画館で黒澤明監督作品を見る。
残念ながらすべて吹き替えでイタリア語のみ。さすがに映像だけでは、どういうストリーかもさえ分からず、がっかり。
ピサ
ピサの斜塔は、フィレンツェから電車で1時間。ピサ中央駅からバスで25分程度の場所にある。
バスに乗ってピサの斜塔が見えた途端、ワクワク気分満載。バスを降りても何となくドキドキ気分。
実際に近くで見ると、想像以上の頑丈さがあって迫力満点。
こんなに傾いているのに倒れないのが不思議。ピサの斜塔を下から階段で登ると、何と歩きにくいこと。
まっすぐ立てないつらさを感じながら最上階までファイト。
この場所で落下速度の計算実験をしたかと思うと感慨もひとしお。隣接する大聖堂は十字架型に建てられており、白が基調で美しい。
フランス訪問記
ミラノセントラル駅から高速鉄道TGVでパリリヨン駅へ約7時間の列車旅。
到着後リヨン駅でホテル探し。格安ホテルが見つからず、一旦15000円程度のモン・タボーホテルを予約。
ホテル到着後、格安ホテルの予約が完了。ハトバスのようなパリ観光プラン(15000円)も予約し、そのままパリ観光へ。
バスでの案内は、フランス語と英語のみ。観光ルートは、グラン・パレ・エッフェル塔・凱旋門・ディナー・シャンゼリゼ通りにあるリドでのナイトショー。
ディナーでは、アメリカ黒人2人とエールフランスに務める中国人と同席になり会話。中国人は英語ペラペラでうらやましく感じる。
中国人とは片言の英語と漢字の筆談で、結構コミュニケーションがとれる。
私の思いをアメリカ人に伝えてくれほどの気の利きよう。困った時の通訳は心強い。
アメリカ人からは、英語がうまく話せなくても大丈夫と励まされたが、私も日本語がしゃべれないからと言われ、逆にがっかりする。
リドのナイトショーは、とにかく度肝を抜かれる凄さ。
観客は総勢1000人程度の半円形の劇場で、豪華なシャンデリアが飾られており、客はシャンパン片手に鑑賞するスタイル。
舞台では男女30人程度の踊り子が華やかな衣装を着て演技を見せてくれる。
ストリーに合わせて舞台装置がどんどん変わり、①ジャングルジム②15m程度のプール③ラインダンスができる舞台④本物の馬が2頭登場する場面などビックリもビックリ。
さすが芸術の都パリがやることは違うと感心させられる。
その後2週間程度は格安ホテルに滞在。ホテルは中国人街にあり1泊2500円。ホテルのマスターはトルコ人。居合わせた日本人は3組。
1組目は夫婦で滞在し、世界各地のレポートを日本に送って収入を得ているらしく、お金が続くまで世界中を放浪するとのこと。
2組目は西洋の骨董品鑑定の勉強のため留学している女性。3組目はモデル業をしていてフランス語の勉強のため留学している女性。
トルコ人のマスターを含め、このメンバーとは、ほぼ毎晩ワインの酒盛りをする。
1日の活動報告やパリの素晴らしいところなどを英語と日本語で交流。トルコ人にはフランス語で通訳。
ワインは1本500円でも色々な種類があり、毎日購入して酒盛りに参加する。酒盛りのネタのために、1日のスケジュールに集中し、ホテルへ戻るのが楽しくなる気分を味わう。
パリの街を歩いていると、あちらこちらで、ちょっとした人だかりができている。そこには必ず大道芸人が姿を見せている。
パリの地下鉄でも、車両の中でいきなり一発芸が始まり、ショーが終わると芸人が帽子をもって寄付を集めにくる。
歩いているだけで楽しい街であることは間違いない。
世界的に有名なルーブル美術館へ行った時のこと。透明のピラミッドの入り口から地下へのエスカレーターに乗りレセプションへ。
神秘な気分を味わいながら入場。少し作品を見ると、わりと早くに「モナリザ」がお目見えする。さすがに人だかり。
モナリザを見ただけでルーブル美術館に来た思いになりいい気分。
その後は見たことのない宗教画や彫刻の作品が永遠と続き次第にうんざり。当時としては何ひとつ感動することもなく早々離脱。
さっさと抜け出して、次はオルセー美術館へ。
歩いて行ける距離なので、途中フランス人に道を聞くと、分かりやすい英語で説明してくれる。
オルセー美術館は印象派の作品がほとんどで、ゴッホ・モネ・ルノアールといった教科書で見た作品がある。
入場してみると、あちこちで学生風の人がイーゼルを立てて絵を描いていた。本物の作品を見ながらマネして勉強しているのだという。
日本では見ない光景に少し驚き。
さすがに知っている作品が多くあると、安心というか、こんなにもうれしいものかと涙が出そうに感動。今までで一番感動した美術館である。
作品の中ではクロード・モネの「印象・日の出」には特に感動する。
近くで絵を見ると幼稚な印象しかないが、少し離れて見ると、何となく寂しく、何となく明るい、そんな情景が思い浮かぶ素晴らしい作品。
帰国してから調べてみると、この作品から印象派という言葉ができたのだと言う。
パリでのお気に入りは、何と言ってもモンマルトルの丘。芸術家の街としても知られている場所。
ピカソやモディリアーニが住んでいた街と聞くだけで郷愁を感じる。坂道や階段も多くあり、どこを歩いているか迷ってしまう程。
丘にそびえ建つサクレクール寺院は真っ白で非常に美しい。寺院に向かって歩いていると、似顔絵を描いている画家がたくさん商売をしている。
それぞれ独特のタッチで似顔絵を描いている。
すごくリアルに描いている人がいたり、漫画チックに要所を誇張して描いていたり、シルエットだけで描いたりと、個性が違っているので見ているだけでも楽しい。
サクレクール寺院の裏には、コタンの小路があり、画家ユトリロが描いた絵画「コタンの小路」とまったく同じではないが、面影の残る風景に感激。
細い路地の突き当りに、急な階段がある独特の風景。寺院の裏手ということもあって、さすがに人通りが少なく、生活感があふれている。
パリでシャンソンと言うと一番に出てくる店がモンマントルにある「ラパン・アジル」。
ゴッホ・ルノワール・ピカソなど、貧乏画家がたまり場にしていた場所。普通の家のような雰囲気で、個性的だが華やかさはまるでない。
ベルギー旅行記
パリの格安ホテルのメンバーと1泊旅行で、ブリュッセルへ。駅に到着するとタクシーはすべてベンツ。
ホテルまでベンツに乗るも、非常に乗り心地が悪い。理由は道が石畳だったため。しばらくホテルで、のんびりしてからレストラン街へ。
パリで修行を積んだ料理人が多いレストラン街は、まるで魚屋のよう。料理を見せずに生の魚を上手に展示してアピール。
氷もうまくディスプレーに使用している。口を開けた大きなあんこうが手招きしているように見え、ムール貝を山積みして飾ってある。
ちょっと違った見せ方に新鮮味を感じる。
ベルギーはドイツ語とフランス語が併用して使用されており、メニューはすべて二ヶ国語で表示されている。
共にしたメンバーはフランス語ができるので、言いたいことを伝えてもらえるので助かる。
ブリュッセルは、レース物とチョコレートが有名。チョコレートはクセがなく、外国製をみじんも感じない日本人にはぴったりの出来栄え。
翌日は世界的有名な「小便小僧の像」を視察。本物は60cm程度の小さな像。あまりにも小さくて予想外にがっかり。
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