和室の床の間では、掛け軸や花が活けてある前は上座だと言うことは、ほどんどの日本人は知っています。なぜこの場所が上座なのでしょうか。
ボランティアで知り合ったアメリカ人からこんな話を聞きました。
「ある旧家に訪問した時、床の間の上座に座って家主から床の間の說明を聞きました。この掛け軸は有名な誰々の作品で云々。
またこの花瓶は江戸時代の作品で云々。床板は杉の300年もので、雲板は・・・。說明を受けるたびに、後ろに振り返らないと見えない。なぜこの場所が上座なのか私には理解できない」と。
席順マナーはビジネスにおいても重要です。上座と下座について、しっかり理解を深めていきましょう。
席順マナー 上座は日本人のおもてなしの心
席順と同じように使われる用語に「席次」があります。席順は普段使いの用語であるのに対し、「席次」は儀式や催しなど、かしこまった時に使われる用語です。
床の間の上座については、由来としては諸説あります。
①床の間は、1段高くして作られています。映画やテレビの時代劇でよく見るシーンを思い出してください。お殿様が登場すると、必ず1段高い場所に座っています。
お殿様が座る1段高い場所に、最も近いのが床の間の前になるわけです。身分の高い人ほどこの場所に座るのが通例になったという説です。
②旧家での日本建築では、部屋はふすまで仕切られています。床の間だけは後ろが壁になっています。また日本では、日本刀を護身のため持ち歩いていた時代が長くありました。
そのため、身分の高い人が安全に過ごせる場所が床の間の前だという説です。
③人が行き来する場所は、どうしても出入り口付近になります。人の動きが多いと落ち着きません。そのため、床の間の前が一番くつろげる場所だと言う説です。
外国人に上座の說明をする場合は、②の日本刀の話をしてあげると、上座のことだけでなく、日本文化の素晴らしさも理解できて喜んでもらえます。
ビジネスの世界では、③の說明を頭に叩き込んでおけば、おもてなしの心を反映することができ、失敗することはありません。どんな場面でも、出入り口の場所を確認して判断することです。
応接室や会議室での席順マナー
上座の考え方がわかったところで、ビジネスシーンでの応接室や会議室での席順についてご説明していきます。
基本ルールとしては、出入り口から一番遠い席が上座になり、一番近い席が下座になります。
来客には、部屋の出入り口から遠い(1)の席が上座になり、お客様にお座りいただきます。そして、出入り口から近い(3)と(4)の席に、もてなす側の自社の人間が座るようにします。
長い机に3名以上で座る場合は、中央の席が上座となる場合もあります。来客が3人の場合には、出入り口から遠い側の、真ん中の(1)が一番の上座になります。続いて(2)、(3)の順になります。
社内のメンバーだけの場合は上図のように、単純に出入り口から遠い順に、席順を考えれば問題ありません。
他社を訪問した場合、丁寧に上座に通されますが、その場合は指示された席に座るのが原則です。また、相手が着席するまで立って待つこともマナーとして大切です。
エレベーターの席順マナー
席順があるのは、応接室や会議室だけではありません。来客を案内する時に利用するエレベーターにも席順がありますので覚えておきましょう。
エレベーターの場合は(1)→(2)→(3)→(4)の席順になります。エレベーターでも同様に、出入り口から遠い場所が上座で、操作パネルの前が下座になります。
自分が下座に立った場合、そのままパネルを見てしまうと、真後ろの上座の方にお尻を向けることになります。できるだけ背中を壁に向けるよう、注意することが大切です。
タクシーの席順マナー
タクシーに乗る場合にも席順があります。お客様や上司と一緒にタクシーに乗る機会に備えて、しっかり席順を覚えておきましょう。
タクシーの場合、一番安全な運転席の真後ろが上座です。4人で乗る場合は、道案内や、料金の支払いをする人が助手席に座ります。この場合は安全を優先させた席順になり、助手席が下座です。
また社用車では、同乗するメンバーが運転する場合は、助手席が上座になります。この場合は、話しやすい人が横にいると言う考え方で、下座は後部座席の中央です。乗車する人数や、仲が良いなどの理由によって、座る場所を変更する場合もあります。席順マナーを考えた上で、臨機応変に居心地のよいスペースを確保しましょう。
困った時の【席順マナー】? まとめ
順序礼節は昔から大切だと言われています。場の雰囲気を平穏に保つための手段です。
何か雰囲気がよくないとか、どうもいまくいかない時には、この順序礼節を見直してみると、案外スムーズに事が運ぶことがあります。
席順マナーは、お客様や目上の人へのおもてなしです。居心地がよく、落ち着くスペースを確保することが大切です。席順マナーをおさえた上で、状況に応じて臨機応変に対応していきましょう。
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