人には、善の側面を持った自分がいれば、悪の側面を持った自分も存在しています。
マーケティングの世界では、善の側面を見てデータ化をし、その数字に基づいてビジネス展開を考えてしまいますが、これだけでは不十分です。
なぜなら人には悪の側面も存在し、そこから得られるものが大きいからです。人の悪の部分には、根本煩悩として6種類があると言われています。
欲望・怒り・愚かさ・怠惰・不信・偏見の6種類です。悪の側面とはどのようなことなのかを解説しながら、世の中にヒットやブームを作り出す方法を紹介していきます。
裏の側面1 人は欲のかたまりの存在である(欲望)
カレー屋さんへ行くと、福神漬けやらっきょうが付け合せのように置いてあったりします。普段であれば、元をとるために福神漬けやらっきょうをたくさん食べる人は少ないものです。
ところが食べ放題のお店へ行くと、人は元をとるために必死になって食べてしまいます。これが自分の中にある欲を持った顔が現れたことになります。
ある程度おなかがいっぱいになればよいのに、さらに食べようとするのが欲のかたまりである人間の裏の側面です。これは、元をとった達成感も味わいたい気持ちの表れです。
おなかがいっぱいになった(機能的価値)と達成感を味わう(感情的価値)の2つの価値が満足できたことになります。
裏の側面2 いかりは人を動かせる(怒り)
人は正しいデータに基づいた正論を聞かされても、どうしても感情的に否定するものです。
ここには、自分自身は相手の意見を理解しようと努力しているにもかかわらず、相手は自分の意見を無視していると言った感情が働くからです。
相手が言っていることがいくら正論であっても、相手は好き勝手な意見を言っているように見えてしまうのです。
これは心理的リアクタンスと呼ばれるものです。自分の選択肢を奪われてしまい、他人から強制されてしまうため、いくらよい提案であってもついつい反発・反抗してしまうのです。
例えば、このゲームが終わったら勉強しようと思っていたのに、親から勉強しろと言われて一気にやる気がなくなったような状態です。
人の悪の側面には、正論に反発してしまう一面があり、その反発や怒りによって、逆に行動が起きるという一面もあります。
裏の側面3 人はなまけもの動物である(怠惰)
人は本質的にはなまけものの動物です。以前から三種の神器と言われたものに、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫がありました。
これらは、家事を楽にこなしたい・もっと快適に過ごしたいとのニーズに答えたものです。また、1960年代の新たな三種の神器には、カラーテレビ・エアコン・車があります。
同じように快適に過ごしたいニーズに答えて普及したものです。ところが、今だに普及しきれていないものもあります。それは食洗機です。
今だに普及率が40%ですから、普及しているとは言い難い商品です。実際に使ってみれば、汚れもしっかり落ちますし、食器の乾燥までしてくれるので便利なはずです。
なぜ普及しないのでしょうか?食洗機には、ぜいたく品のイメージがあり、夫やしゅうとめに遠慮している部分が存在します。
そこにはインサイト(人を動かす隠れた力)が働いています。つまり手間を省いて、効率化していることは悪いことだとのイメージがあるためです。自分がやってきたことは素晴らしいことだという心理が働いていることになります。
裏の側面4 言葉で人はだまされる(偏見・愚かさ)
人は極端な話は大好きで、可能性が低いことでも起こるものだと考えがちになるものです。
例えば、大地震が起こるかもしれないから家は買わないでおこうとか、事故に合うかもしれないからバイクは乗らない方がいいなどです。
その極端な話が大好きな性質を逆手のとったのが、煽り(あおり)商法です。英語ができないとこれから先、仕事はなかなか見つけられないですよと極論で危機感をあおる手法です。
この場合は、限定的な数字やデータの情報を使っていることが一般的です。中には有名人や専門家によって解説してもらい、具体的なデータを証拠にして說明されています。
裏の側面5 人はいつも矛盾だらけ(不信)
占いは、遠い昔からずっと人々の心をつかみ続けています。
今でも大人気であることは、雑誌には必ずといっていいほど占いページが存在しますし、朝のニュースでもあり、占い師の番組まであるくらいですから誰の目からも確認できます。
インサイト(人を動かす隠れた力)は、当たったかどうかではなく、話を聞いて頑張ろうという気持ちが働いています。
人はなぜ占いに熱狂するのか?の裏には、バーナム効果(誰にでも当てはまる一般論)が用いられています。
人は客観的には、あまり満足した暮らしができない状態であっても、主観的には何となく幸せを受け入れています。今日はいい日になりますよとの占いは、主観的に幸せな気持ちになれるからなのです。
【行動経済学】勝つマーケティングは裏の側面を知ること! まとめ
人には善の側面と悪の側面が存在しています。つまり人は表の顔と裏の顔を持っているということです。今回の說明をまとめると以下のようになります。
【欲望】
表)味わって美味しく食べたい → 裏)もったいないので元を取ろう
【怒り】
表)理解して分かっている → 裏)つい反論したくなる
【怠惰】
表)楽して手抜きをしたい → 裏)サボりだと思われたくない
【偏見】
表)冷静に聞けばわかる → 裏)過激に言われるとつい納得する
【愚かさ】
表)確率的にはほぼあり得ない → 裏)何となくよいと思ってしまう
【不信】
表)誰にでも当てはまる → 裏)自分のことだと思う
マーケティングの世界で、善の側面だけを見てデータ化してもダメだと言わる理由が理解できたのではないでしょうか。
多くの人は、善の側面と悪の側面が存在することくらい理解しています。ところがいざビジネスに取り入れるとなると、どのように考えればよいのか分からないのが現状です。
人の表の顔と裏の顔を考えることは、ビジネスを成功に導いてくれる大きなポイントになります。悪の側面をどのように取り入れてデータ化していくのかは、マーケティング担当者の腕のみせどころです。
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