マーケティング学習を始めた人にとって、ブランドの性質を知ることはとても重要です。ブランドの性質を知ることで、イメージアップのためにするべきことが明確になります。
今回は、商品価値を高めるために必要な、ブランドの性質について說明していきます。
ブランドの性質を知ることによって、マーケティング担当者が見つめる視点が理解できるようになり、マーケティングの価値が分かります。
1 顧客のジョブを解決できるのが優れたブランド
1968年レビット博士の著書「マーケティング発想法」の冒頭に 「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という記述があります。
この言葉が、今でもマーケティングの代表的な言葉として使用されています。また、2003年には、クリステンセンがジョブ理論を発表しました。
ジョブ理論とは、顧客が片づけたい用事(ジョブ)こそが、商品を買うか買わないかの決定要因であるというものです。
顧客がドリルを買うのは、ドリルそのものがほしいからではなく、穴を開けたいから。つまり穴がほしいからなのです。
穴さえ開けれれば、ドリルでなくても良いということになります。穴を開けること自体がつまりジョブなのです。
優れたブランドには、この顧客のジョブを解決するものを備えています。
例えば、忙しいサラリーマンが昼食をとる場合、限られた時間の中で少しでも早く昼食を済ませたいと考えているとしましょう。
その場合、評判のおいしいさかどうか、豪華さや体によい食事かどうかは、忙しい時には大した価値ではありません。
むしろ、すぐに食べられて、最低限のおいしさで、そこそこ満腹感を味わえることの方が最大の価値になります。
ここでは早く食事を済ませることがジョブになります。この場合は、ハンバーガーや牛丼のようなファストフードが選択肢になります。
このように、優れたブランドには、何らかのジョブを解決していることになります。
ターゲットにしているのは誰(Who)かを議論する
顧客に喜んでもらうには、ターゲットにしているのは誰かを明確にするために議論することが大切です。
年齢・職業・年収・ライフスタイルなどを明確にすればするほど、行き届いたサービスを提供することができます。
ただ、これらのターゲット情報を単純に羅列するだけでは不十分です。解決するジョブがどこに潜んでいるかを見つけることが最も重要です。
ジョブを見つけだすためには、顧客の声を聞くことも大切です。ただし顧客の声を聞いても、簡単にジョブを見つけ出せない理由が2つあります。
- 顧客は意思決定する際には、ほとんど論理的には考えていないこと
- 顧客がいつも明らかにしているジョブがあるわけではないこと
一度自分自身のことを考えてみてください。なぜ今日この靴を履いたのか・なぜこの昼食を食べたのか・なぜこの道を歩いたのかなど、すべて論理的な根拠を持って意思決定しているわけではないと思います。
また、ジョブに関しても快適なライフスタイルの中では、これがないと困るほどのことはほとんど存在しないのではないでしょうか。
そのため、顧客の声を聞く際には、少し工夫が必要です。顧客がとった行動に関して質問をしていくことから始めます。
質問の中で、ジョブの仮説を立てていきヒントが見つかれば、次から次へと質問を繰り返し答えを導きだします。
この一連の質問の中で、誰も気づいていないジョブを発見しなければなりません。そうは言っても、ジョブは簡単に見つかるものでもありません。
このように顕在化されていないからこそ、発見されたジョブには価値があることになります。まずは世の中の定義を理解することです。
2 マーケティング担当者が力をそそぐ3つの要素
売上とは(購入者数)X(購入単価)で表すことができます。
しかし、これだけでは十分ではありません。もう少し細かく分析すると次のように6つの要素から考えていく必要があります。
- 人口
- 認知率
- 購入率
- 購入個数
- 購入頻度
- 購入単価
この内、マーケティング担当者がコントロールできるのは以下の3つです。
認知率(どれだけの人が知ってくれているか)
購入率(どれだけの人が選んでくれたか)
購入単価(いくらのものを買ってくれたのか)
認知率
もちろん商品を知ってもらわないと買ってはもらえません。ただ、認知していると言っても形態として3つあります。
- Top (Top of Mind) あなたのブランドが真っ先に浮かんだ
- Una (Unaided) 他のブランドが先に浮かんだがあなたのブランドも知っている
- Ai (Aided) 思い浮かばなかったが何となく聞いたことがある
売上につながるのは、Top (Top of Mind)です。この椅子取りゲームがマーケティング担当者が日々頑張っていることなのです。
購入率
購入率アップを妨げる要因には、次のようなものがあります。
- 他社商品を使っている
- もともとカテゴリーに興味がない
- 価格が高くて購入できない
購入率を上げるには、ブランド選考(プリファレンス)を高めるしかありません。認知率は100%が限界ですが、購入率には限界がありません。
また、一度築いたブランドの好みはなかなか崩しにくい特性があるので、ブランド選考を高めることは非常に有効なものになります。
ブランド選考が高まれば、価格が高くても顧客は購入してくれます。
購入単価
商品やサービスが手に入れやすい価格になっているかは、顧客にとって購入を判断する重要な要素です。
そのため、他社との兼ね合いも考えながら顧客にお得感を与えられる価格設定になっているか、こまめに見直すことが大切です。
売上を上げるために、短期的に価格を下げるやり方もありますが、ブランド選考が低いという問題が解決されていないことを考えると、おすすめできるやり方ではありません。
顧客は価格が安いことにすぐに慣れてしまうので、ブランド選考を高めることから益々遠ざかっていきます。
3 このブランドは何(What)を売っているか
購入率を上げることは最も重要なことですが、その前にこの商品は何を売って、どのようなジョブを解決していくのかを確認する必要があります。
ドリルを売るなら穴を売れの話にもあるように、ものを売りたい時に商品そのものを売ってはいけません。
しかし世の中を見ると、商品を売る広告が非常に多いことが分かります。その商品の特質から、顧客のどんなジョブを解決したいのかが大事になります。
Whatの中で重要なのが、POD(Point of Difference)差別化ポイントです。他社よりいかに優位であるかを示すことがたいへん重要になってきます。
PODを作るポイントには3つのことが考えられます。
1 他社の追随を不可能にするくらい何かに極めた商品にする
カテゴリートップの企業が定石にしている考え方です。他のブランドは寄せ付けないよう、商品の魅力を誇示します。
2 現状商品が持っている機能を再解釈して特性をだす
USJのジェットコースターを反対に走らせた例などのように機能の再解釈によって魅力を打ち出します。
3 メリットを組み合わせて独自性をつくる
おいしさと脂肪燃焼をかけ合わせたヘルシア緑茶などのように、メリットの組み合わせで新たな魅力にせまります。
このように他のブランドよりすぐれた部分を出すことで価値をつくる必要があります。
マーケティングの価値とは?ブランドの性質とは何かを知ろう!まとめ
売上を上げるためには、ブランド選考(プリファレンス)を高めることが必要です。また、優れたブランドには、顧客のジョブを解決するものを必ず備えています。
ブランドの持つ性質が理解できれば、いかにジョブ解決の要素を取り込めるかが鍵となっていきます。後はマーケティング担当者は、コントロールできる3つの要素に力を注ぎ、売上アップに貢献していくだけです。
認知 (知ってもらう) 一番に思い浮かべてもらう
購入 (選んでもらう) 競合と比べた中で、あなたのブランドを選んでもらう
価格 (適切につける) 価値を理解してもらう
今回はブランドの性質について說明してきました。売上を上げるためのからくり(マーケティングの価値)も少しは理解できたのでないでしょうか。マーケティング担当者の視点からもビジネスを見つめてみましょう。
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