収穫加速の法則によって、ビジネスを取り巻く環境が大きく変化しています。収穫加速の法則とは、技術の進化のスピードが早くなっていることを指しています。
つまり言い換えると、今後1年の変化は、これまでの10年の変化に匹敵することになります。過去の経験だけでは将来を予測することが難しい状況にあることから、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれるようになってきています。
今までの常識が、通用しなくなっていく中で、模索しながらビジネス展開を考えていく必要があるわけです。そこで、大切なことは現状を観察しながら、的確に将来の課題を見つけ出す力が必要となってきます。
今回はその「課題発見力」の磨き方について解説していきます。考え方を身につけて、ぜひ自分のスキルとしてビジネスに生かしてください。
課題発見力とは
営業マン1500人に聞いたアンケートに基づいた結果です。営業マンが必要だと思うスキルの1位が「課題発見力」になっています。多くの営業マンが「課題発見力」の重要性を認識していることを示しています。
2位が「ヒアリング力」、3位が「コミュニケーション力」以下は表のように続いています。
「課題発見力」とは、経済産業省が提唱した社会人基礎力のひとつです。それには、「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」と定義されています。
個人が関わる社会や企業組織の中で、長く活躍するために必要な能力です。
「課題発見力」の他に「問題解決力」がありますが、よく似ているようで、まったく別ものです。
「問題解決力」は、すでに発生している問題を解決に導く力です。つまり誰かが発見した問題を解決することになります。
「問題解決力」の多くの場合は、経験してきたことや前例を見て判断すれば、ある程度対処することが可能です。
一方「課題発見力」は、問題が発生していないところから、自分自身で課題を見つけ出していく力です。
課題発見力がなぜ必要なのか
ビジネスやそれぞれのビジネスシーンでは、いつも順調にいく訳ではありません。それどころか、いつも何らかの問題が発生します。
その度にオペレションの変更を考えざるを得ないことが度々起こってしまうものです。問題を解決することによって、企業の商品やサービスの向上を生み出す結果になります。
逆に問題を放置すれば、企業の売上に悪影響を与えてしまいます。「課題発見力」は、問題を起こさないために、事前に改善するべき要因を見つけだす力になるわけです。
「課題発見力」は、仕事の質を改善することだけでなく、個人の能力を向上させるスキルでもあります。「課題発見力」を持った人材がいない場合は、トップダウンの指示待ちの状態になってしまいます。
このような状況では企業の競争力を高めることもできず、問題の発生を事前に防ぐこともできなくなります。つまり、「課題発見力」は、一歩先の段階で未来を見据え、さらなる成長に取り組んでいけるのです。
特にマネジメントをする立場の人材には必須の能力になります。金融・保険・サービス業界などでは、「課題発見力」のある人材が求められます。
職種だと、企画・商品開発・生産管理・エンジニア・コンサルタントなどは「課題発見力」を生かせる場面が多くあります。
課題発見力の磨き方
「課題発見力」を磨くには、3つの視点から考えていく必要があります。
「課題発見力」を磨くポイント
- 現状を見つめ疑問を持つ
- 将来を見つめ疑問を持つ
- 論理的に考えてみる
現状を見つめ疑問を持つ
「課題発見力」を磨く1つ目の視点は、現状をしっかり見つめることです。前例や習慣で行動していることに疑問を持つ意識が大切です。
現状をそのまま受け入れて行動するのではなく、もう少し効率的なやり方はないかと考えてみることです。これが一般的に言われるゼロベースでものごとを考えることになります。
このまま行動し続ければ、何か問題が起きるかもしれないと考えれるようになれば、「課題発見力」を磨く第一段階はクリアしています。
改善できるところはないかと、常に考える習慣をつけていきましょう。
将来を見据え疑問を持つ
自分たちが思い描く、理想の形から逆算して考えてみる視点も必要です。効率だけを追い求めるのではなく、時代にマッチした観点からも見直す必要があります。
いわゆる未来志向の考え方です。AIが台頭する時代、単純な作業や情報収集などの業務はAIに取って代わられると予想されています。
AIの得意とするところは、過去のデータから導き出された現状の改善です。「課題発見力」に関しては、AIにとってむしろ苦手な領域です。将来を見据えた視点から、現状を見直していきましょう。
論理的に考えてみる
課題を見つけたとしても、どのような原因があるのかを正しく說明できなければ意味がありません。ちょうど、野球観戦でヤジを飛ばすようなものです。
そのやり方ではダメだと言ったところで、改善には結びつきません。正しく分析をし、論理的に考えることで、課題の解決につながります。
いわゆるロジカルシンキングと言われるものです。何が足りないのか、また何が必要なのか、を論理的に考えて初めて対処の方法が見えてきます。
「課題発見力」を磨くトレーニング法
大学ではこのような小論文の試験があります。
- 大人になるとなぜ鬼ごっこをしなくなるのかを述べなさい
- グー・チョキ・パーの他に新たにキューを入れた遊びを考えなさい
- 芸術を無視して人生を送っていけるのかを述べなさい
1.2.の問題は早稲田大学での入試問題です。
指定されているのは、600字以上1000字以下の小論文形式です。
3.の問題はフランスでの学生への問題です。
一見何気ない問題に思うかもしれません。しかしこれらの問題は、「課題発見力」には良いトレーニングになります。一度自分なりに小論文を書いてみると、自分自身の能力の現在地を発見できます。
これらの問題は小論文ですので、決まった回答が存在するわけではありません。ただ試験問題という立場でいうと、試験官を納得させられれば、合格点をもらうことになります。
個人的な見解では、大事なポイントとしては3つ存在するのではないでしょうか。
考えるべき大事なポイント
- 観察力
- 創造力
- 論理力
観察力
現状をどこまで把握しているかと言う点です。何も考えず、前例や慣習だけで行動していると、現状のどこが良いか、何が問題なのかを理解することは困難です。
まずは現状を、どこまでしっかり観察をしているかがポイントになります。つまり現状の把握の度合いを見られることになります。
創造力
前例や習慣をそのまま受け入れていると、新たな発想には至りません。例えば、2のジャンケンの問題では、新種のジャンケンになる人がほとんどだと思われます。
遊びを考えなさいとの質問に対して、ジャンケンが頭から離れていない状態です。創造力としてはもう少し飛躍が必要です。
オリジナリティを発揮するには、前例や習慣に固執することから一旦離れて考えてみることが大切です。
論理力
考えた内容が、筋道を立てて述べられているかを問われます。現状の問題点をしっかり理解しながら、新たな考えと比較したり、それが道理にあっているかなどを検討する必要があります。
「なるほど」と思えるように、相手を説得させるだけの說明ができなければ、協力者や賛同者を得ることができません。結局は一人よがりの考えで終わってしまいます。
3つのポイントを整理
ポイントを整理していきます。
現状を把握する
議論している事柄について、現状どのような使われ方をしているのか?どのような目的なのか?また、事柄についての問題点やデメリットは何か?これらのことをピックアップして書き出していきます。
仮説を立ててみる
ピックアップしたものを見ながら、改善するための案を考えていきます。ひらめきやイメージは非常に大切です。思いついたことをすべて書き出します。その中で自分なりに、もしこんなことが出来たならおもしろいと思うことを取り出し、メリットの検討をおこないます。
論理的に考えてみる
現状把握した事柄と、自分が立てた仮説を比較検討し、仮説の優位性を系統だてて表現していきます。次に自分が立てた仮説をどのように実現するのかを、その方法や考え方などをまとめていきます。最後に仮説が実現できれば、どんな状況が待っているのかをメリットとして、また将来の夢として語っていきましょう。
1つ目の観察力は、現状を見つめて疑問を持つことにつながります。また、2つ目の創造力は、将来を見据えて疑問を持つことにつながります。
さらに3つ目の論理力は、まさしく論理的に說明して、相手を納得させることになります。
「課題発見力」につながるトレーニングは、常に意識することで磨かれていきます。
このようなトレーニングをすることで、マネージメントができるリーダーとしての資質も備わっていきます。
まとめ:【課題発見力】を磨いて「VUCA時代」を生き抜こう
「課題発見力」を身につけることは、個人の能力を向上させることはもちろん、企業の成長に大きく関わってくるスキルです。特に個人の能力が問われる「VUCA時代」には必要なスキルです。
現状を見つめて疑問を持つ・将来を見据えて疑問を持つ・論理的に考えてみる。この3つの視点からものごとを考える習慣を持つことが大切です。
このように考える習慣ができれば、「課題発見力」のスキルを身につけることができます。
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